産業観光とは何か,富山における産業観光の歴史や現況・展望などの概論を講義。観光の歴史・定義・意義を説明し,観光は社会的文化的行為であると同時に経済的行為であり,地方創生の牽引役となり得る要素を持つこと,あらゆる地域の優れたモノに接する行動は全て観光であり,従来の観光は自然・歴史・文化などに触れるモノであったと説明。
産業観光の歴史は,1950年にフランスの経営者協会が輸出振興を図るため,外国人の産業施設視察に便宜を与え受入体制の整備と宣伝・斡旋の制度を始めたことがルーツで,一般観光客の見学対象まで普及したことから産業観光と呼ぶようになり,1960年代に日本でも集客を意図した工場が見られるようになったと説明。製品に対する信頼性や安全性などのPR,企業イメージの向上等を意識した工場見学コースが設けられ,その後は社会背景に合わせ様々な産業が対象に拡がってきたと話した。産業観光の定義と産業観光資源の体系,分類について説明。特性による分類を説明しながら富山県内の産業観光事例を紹介,目的による分類は「一般観光型」『地域振興型」「モノづくり,産地理解型」「自社PR型」「企業ガイダンス型」に分けられること,富山商工会議所では「観光コース」「ビジットコース」「探求コース」に分類して取り組んでることを示し,企業・来訪者・地域自治体の産業観光の意義について解説した。続いて富山県の観光と産業について講義。富山観光のルーツは立山信仰から始まったことを紹介。産業について売薬産業の発展,北前船による回漕業の隆盛とそれら資本家による明治期における産業振興から大正から昭和にかけての富山県の電源開発による工業化について説明。
公益社団法人とやま観光推進機構の水落仁氏が,観光についての国の戦略と富山県の対応を説明。観光先進国を目指す「3つの視点」と「10の改革」を示し,観光による地方創生を図る方針をあげ,富山県の現状と県観光振興戦略プラン基本目標について紹介し,とやま観光推進機構のDMO活動と今後の課題について説明した。
富山における産業観光について説明。富山の観光の現状は自然が主な観光資源であり,天候・季節に左右されるため,天候に左右されない通年型観光が必要となり,日本海側随一のモノづくり県の産業が新しい切り口となると話し,地元への定着,交流人口を増加させることが人口減少と高齢化する地域の活性化に重要とした。地方創生の主役が観光であり,地域の特性を活かし自然景観と近代的な産業と伝統的な祭・文化をコンパクトな交通網で繋ぐ産業観光を進めていくとし,富山商工会議所が発行した『富山産業観光図鑑』などの取組を紹介した。今後の産業観光の展開として,既存の観光資源との組み合わせやビジネス客への観光シフト,富山の知名度向上がテーマとなり,隣県エリアとの連携した観光の広域化,情報発信の重要性とIT活用も重要となると話した。また,産業観光を学生側の就職活動や企業側のリクルート活動,行政側としてI・U・Jターン対策へ活用できるとも説明。観光の国際化への人材育成も重要となり,ビジネス人材活用や大学との連携も大切となると話した。